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1995年9月4日:タヒチピースマーチにおける武村正義氏のメッセージ
はじめに
このページの内容は、タヒチ現地レポートを担当しておられたP原人さんに、許可を得て転載させていただきました。

武村正義氏(当時蔵相)は現地時間1995年9月4日の午前中にタヒチ・ピース・マーチ(タヒチ平和行進)に参加し、時には歌を歌いながら行進したのち、抗議集会にて以下のスピーチを読み上げました。(P原人さんは武村氏に同行した方です)このメッセージをパペエテより電子メールで送付していただいたMonamonaは、読みながら涙で画面がかすんで見えなくなりました。そのころ、よく一緒に活動していた友人にもプリントして渡したら、彼女も我慢できずに電車の中で読んでしまい、号泣して周囲の人から変な目で見られた〜、と後で笑って話してくれました。

残念ながら、私達はタヒチ・ピース・マーチに参加できませんでしたが「我々の気持ちを武村さんにタヒチに届けていただいた」と思っています。当時の日本はバブル崩壊後で景気が悪化していくさなかでした。そのタイミングで、しかも蔵相として公務を休みパペエテに行く事は、我々の想像も及ばない大変な決意と決断が必要だったことでしょう。心無い国会議員からの非難や経済を最優先するべきといった了見の狭い国民からの新聞投書などの批判を受け止めながら、それでも現地に胸を張って赴き、我々の気持ちを代弁していただきました事、心より感謝の意を表明したいと思います。

どうもありがとうございました。
メッセージ(抜粋)
「今日は激しさゆえにかえって鎮められた怒りを、皆様に伝えたいと思います」
(との出だしで始まりました。)

世界からお集りの皆さん、私は本日、フランスの核実験に抗議するために、ポール・ゴーギャンが愛し、サマセット・モームが小説に描いた南太平洋の美しい島、タヒチにやって参りました。

青い空、澄んだ空気、生い茂る植物。この美しい自然があるからこそ、人類は生かされていると、改めて思い知りました。しかし、今から50年後百年後も、人間はここに立ったとき、この美しさを実感できるでしょうか。 今、ここに集まった私たちが感得している気持ちと同じものを共有しあうことが出来るでしょうか。私は是非そうあって欲しいとあえて思いたいのですがそれはきっと楽観的に過ぎることでしょう。 今すでに地球上のあらゆる自然が危機に瀕しているのです。なぜなら、人類は核兵器を開発したことによって、この美しい自然に対し、実は50年前から環境破壊と言う名の戦争を開始していたからです。 この目に見えにくい戦争のおかげで、名十億年もかけて自然が作り上げて来た環境を、人類はわずか50年の間に大きく傷つけてしまいました。 核の恐ろしさは、広島、長崎の例をあげるまでもなく、その非人道的な無差別大量殺戮性にあることは言うまでもありません。 それに加えて深刻なことは、今生きている人類や自然だけでなく、我々の子孫にも我々をとりまく魚や鳥や動物たちの子孫にまで核汚染は広まってゆくという事実です。 核を持って以来、自然そのものも被曝者になってしまいました。

自然を守ろう、美しい環境を守ろう、という言い方は正しく有りません。 むしろ、我々人類こそ自然や環境によって守られているのです。 私たちが鳥や魚を守るのでも、私たちが澄んだ空気やおいしい水を守るのでもありません。鳥が飛び、魚が水を泳ぎ、澄んだ空気と美味しい水があるからこそ、人類は生きてゆけるのです。 我々は自然によって守られているのです。

私が、フランスの今回のモルロアでの核実験に反対するのは、自然と言う人類の産みの親を傷付け、その結果、我々の子孫にまで害をもたらすことになるからなのです。同じことは中国の核実験にも言えます。 フランスはヨーロッパにおいて、自由・博愛・平等という、人類の財産とも言うべき理念をどこよりも早く明言し、これを人類の普遍的理念として世界に伝えました。世界はこのようなフランスから多くのものを学びました。 また、中国はどこの国よりも早く文明を起こし、世界に影響を与えてきました。フランスと中国という、世界を代表する文化文明を作り上げた国々がいまだに、核に頼ることに、私は核時代の政治家のひとりとして深い失望を持っています。

科学技術の進歩により世界は狭く小さくなり、世界の国々はボーダーレスが進み相互依存関係はさらに進化されるでしょう。そのようなボーダーレス時代に、核汚染までボーダーレスにしてはいけないはずです。 核汚染は国境を軽々と越えるばかりか、時間をも越えて後世の人類と自然に災難をもたらすのです。

中略〜

人類の生み出した科学技術はこれからもあらゆるものを作り出し、人類の幸福に役立つでしょうが、科学が作れないものは、自然であります。そんな自然を人間が破壊することは許されません。 反対や抗議の声もあげられずに、人類を守っている自然環境に対する核実験と言う名の戦争をストップしよう。これが私のメッセージであります。
日本からピースパレードに参加した人々。
赤とんぼなどの童謡を歌いながら行進する武村氏。
パレードを見守る沿道のマオヒたち。
タヒチ独立運動の父「メトゥア」(おやじさん)ことポウバナア・ア・オオパ氏の銅像に集いマオヒの旗をふる人々。彼らの胸中は?
メッセージを読み上げる武村氏、まさに「むしろ、我々人類こそ自然や環境によって守られているのです。」の部分を読上げている映像。
実験直前のモルロア空と雲が映り込み、とても美しく見える。しかし、このラグーンの地下には…